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水鏡-2

この冬出会った水に映る風景をもう一つ。下の写真は愛媛県宇和島市にある「天赦園」の一風景。「天赦園」は宇和島伊達家の造営した大名庭園で慶応2年に完成したというから大名庭園としては比較的新しいのですが、何故ここがそんな幕末騒乱の最中に作られたのか・・・やはり憂国の志士達と藩主の論議の舞台でもあったようですね。国の名勝にも指定されています。

さて私そんな名勝にもかかわらず、現地に入るまでその存在を知らず、街の案内板で初めて知り、名園とあらば見なければ造園家の名折れ、とばかりにふらっと訪れたのですが、なんと意外にも良い庭ではありませんか。池泉回遊式の大名庭園を地で行ってる感じではあるのですが、あまり手を入れていない大木の背景と遠くの鬼が城連峰の借景、広い空、光の加減・・・それらが水に映り込んで洋風の絵画のようでもあります。水は決して澄んではいないのですが、風も無く静まり返った水面と朝の柔らかい日差し、逆光を大きな樹が遮っているためすこぶる綺麗に風景がミラーリングしています。またもや「たまたま」が起こした出会い、嬉しい限りです。

そんなわけでこの冬出会った二つの風景のテーマは、水に映る、すなわち“水鏡”。

私は今更ながら至って単純な事に気付かされたのですが、水面に綺麗に風景を写し込むのに必要な事は、まず波を立てない事、光の取り込み方、静寂を作る・・・ということ。当たり前みたいですが、無の境地に入ってこそ初めて己の姿が映る・・・みたいな、これはもはや禅の世界ではないか(またもや大げさ、笑)。この度会得した“水鏡”の極意、どこかの庭で使えるかな。