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工房「秋の森」

「深山幽谷のような庭・・・それに相応しいベンチを作成せよ!」。今回それが我々に与えられたミッションでありました。

まずは材料探し。丹沢のダムサイト、房総の海、方々の流木・銘木店・・・そして、やっとたどり着いたのが千葉県市原市にある「工房 秋の森」。

表情豊かな古木、変木の数々。圧倒的なボリューム。これはもう商売の域を超えているのではないかと思えるほど、驚きのコレクションであります。

月日を生きてきた証・・年輪、香り、美しい木目、艶めかしいうねり、複雑怪奇な木肌・・・インスピレーションがひしひし湧いてきます。

創造の森を彷徨うこと1時間、生きている樹の事は多少分かるが木材になってしまうとからっきし名前も分からない。そんな中お会いしたのが、初めて電話で話した時も、とても良い対応をしておられたが、実物もやっぱりニコニコしていて、木の加工も自分でやっているというYさん。

Yさんに案内して頂きながら、ようやくこれぞという木に巡り会う。白い木肌の栃の木。木目の感じが川の流れと波紋のようで何とも良い。木形のラインも艶っぽい。生えていた頃の樹幹が想像できる。

選んだ材の前で加工の仕方について話し合う。ランドスケープデザイナーさんに端部の形に線を入れてもらう。節穴や腐朽部分の処理、側面のすり付け方、研磨の仕方などをYさんに相談する。ニコニコしていた顔が真剣になる。的確なアドバイスが返ってくる。やっぱプロだ。

自然と木が大好き、加工をして頂いたYさん

3週間後出来上がった板材を引き取りに来た。想像通りの良い仕上がりに胸をなでおろす。Yさんにどうしてこの世界に?と聞いてみた。「自然が好きなので・・」という答え。なるほど、こういう人に掛かれば木も優しく生まれ変わるのだなと納得する。「ベンチ出来上がったら写真送りますから」「楽しみにしています」と挨拶を交わして秋の森を後にする。帰って工房秋の森さんのインスタを覗くと、仕上がった栃の木の写真にお別れのハンカチを振るスタンプが押してあった。

さて良い材料は手に入った。後は造園家の腕の見せどころ、真剣勝負で御座います。