トリカブト
夏から秋にかけて山を歩いていると紫色のダース・ベイダーが良く目立つ。
そう「トリカブト」だ。トリカブトと言えば「毒」、自然界ではフグに次ぐ猛毒です。
歴史の舞台での暗躍は言わずもがな。アイヌの人達はこの毒を矢の先に付けてクマを射止めていたようです。毒は不思議なことに傷口に集まってくるのでその部分だけを切り取れば食肉として利用できたとか。
塊根を乾燥させたものは漢方薬としても用いられ附子(「ぶし」または「ぶす」)
と呼ばれ、これを飲んで苦しむ表情からいわゆる「ブス」という言葉の語源になっているそうです(諸説あり)。
毒ばかり注目されるトリカブトですが、花の色は鮮やかな紫でとても綺麗、形もなかなか個性的で思わずカメラを向けたくなります。実はこの花の容姿には生き残るための知恵と工夫が隠されています。
まずは花の色、鮮やかな紫色はマルハナバチを引き寄せるためには一番目につく色となっています。そして形、兜(がく)の奥には花びらが隠されていて蜜を蓄えていますが、この密を求めてハチが頭を突っ込むとお腹が雄しべや雌しべに触れて受粉するような作りになっています。独特な色や形を持ったトリカブトの花は種の維持のための特殊な仕掛けだったのですね。
以上諸々の文献の受け売りでは御座いますが、調べるほどにネタに事欠かないトリカブト、なかなかの曲者でございます。まかり間違ってもこ奴の抽出物が食膳に盛られるなんてことの無いよう、人の恨みを買わず、清く正しく人生を歩まねばと思う次第で御座います。